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時制を旅する(8) あっ、バスが来た。ほんとだバスが来る。

「あっ、バスが来た」「ほんとだ、バスが来る」。 バスが近づいてくるという同じ事象を表すのに、一方は「過去」か「現在完了」のように見えて、他方は「現在」か「進行形」のように見えます。 これはなぜでしょう。
「ThisとThatの境界」で書いた、「意識空間」という概念をもってくると、この説明がうまくできます。thisは意識空間の中のものを表すのに使われ、thatは意識空間の外のものを指す場合に使われます。また、comeは意識空間に入ってくることを表し、goは意識空間から出て行くことを表します。この「意識空間」は意識の中で自由自在に移動したり大きさを変えたりします。
http://je.at.webry.info/201111/article_34.html
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ここで、この考えを「バスが来た/来る」にあてはめるとこういうことです。
「バスが来た」というときには、意識はバス停から見える視界にあります。待っていたバスが視界、すなわち意識空間に入ってきた(完了)ので「バスがきた」と言っています。

「バスが来る」というときには、意識はバス停にあります。バスが停留所、すなわちこの場合の意識空間に「入ってくる」(近い未来か現在進行形)といっています。

同じ事象を表す場合でも、意識やこころの置き場によって、表現は変わるということです。

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時制を旅する(5)で、現在完了を表す訳語について書きました。
http://je.at.webry.info/201203/article_5.html
現在完了は「~している」「~してある」という訳語が実は自然です。関連して、こんな日本語を考えてみます:

ふたりで友達の家に行こうとしてます。「私、ちょっと買い物していくから」「じゃあ、行ってるね」。

この「行ってるね」ってどういうことでしょうか。「行っている」だから一見「現在進行形」に見えます。前に書いたように、「~している」だから「現在完了」という解釈もできます。ほんとうのこころはどうでしょう。

意識の空間(というか時間)が、「買い物をしている時間」に移動していたとしたら、「君が買い物をしているそのころには私は友達の家に行ってしまっている(行っている)」という解釈ができます。英語文法的に言えば、「完了形」で、意識が未来(買い物をしている時間)に移動しているから「未来完了形」って感じです。 (でも英語で自然に言うならI’ll be there. って感じでしょうか。)
または、「買い物をしている間に友達の家に向かって移動している」とすれば、「移動を続けている」という進行形という解釈もできます。I’ll be heading there っていう感じでしょうか。

このように、「意識空間」と同じように、ことばの中では意識時間も自由に移動します。


それを踏まえて
間接話法での時制の一致を考えます。この「時制の一致」ってやつも、日本人には鬼門のひとつです。

He said, "I'm busy."(彼は「僕は忙しい」と言った)を間接話法にすると、
He said he was busy.
となります。これが時制の一致です。
でも、一致させない例外があります。これはどういうことでしょうか。旺文社の「ロイヤル英文法」を見ながら考えました。
例外(1) 不変の真理や社会通念を表すとき
We were taught at school that the square of 10 is 100. (学校で10の2乗は100と教わった)
My grandpa would often say, time is money. (祖父は,時は金なり,とよく言っていた)
これは、私たちの通常の理解の範囲内です。で、次です。

例外(2) 現在の状態・習慣・特性・職業を表すとき
Mr. Okuda asked me what my father does. (奥田先生は父の職業は何かと尋ねられた)
ロイヤル英文法ではこう解説しています:
“現在の習慣とか,習慣というほどでなくても,今も当てはまることは時制の一致を起こさないことがある”
At the party last night, he whispered to me that I am beautiful. (ゆうべのパーティーで彼は私に,君はきれいだよとささやいた)
「ロイヤル英文法」には“意味に混乱がなければ,1と同じく過去に一致させることもある” とも書いてあります。

これを「意識空間(時間)」を用いて考えるとすると、うまく説明できると思います。被伝達部分(話した部分)のことを実態として「意識時間の内」で考えているなら現在で、「意識時間の外」で単に「話されたこと」と捉えているなら過去、ということです。

例えば
Tom said Nancy was sick.
この場合、話は過去の事実を伝えていて、Tomの視点でNancyの病気のことを言っていて、Nancyの病気のことは実態として話者の意識空間の中にはいないので、過去形が使われます。

Tom said Nancy is sick.
こうなると、話者の意識空間の中にNancyの病気が実態として捉えられています。 だから現在形が使われています。

時制ではありませんが
My ex-wife was Chinese.
この例では、元妻はすでに話者の意識空間からは外れています。 もう思い出となってしまっていて、その人は意識空間の外にあるので過去形になっています。もう遠くに行ってしまったか、亡くなってしまったのかもしれません。

My ex-wife is Chinese.
この場合は、今も元妻の存在が実態として意識空間の中にあります。まだ友人関係が続いているか、または今も「戻ってきてほしい」と思っているのかも知れません。

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現在完了と過去の違いも、意識空間(時間)のうちとそとという区分を考えれば、説明がつきやすいかもしれません。
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英語の文法は学校で「法則」みたいに教わったものなので、「こうあるべき」という意識が強いかもしれません。 でも、ことばというものは、こころを表現するものなので、ひとつの事実がそのときの意識やこころの位置によって違う表現になるのは当然のことです。 「こういう場合は過去で、こういう場合は現在完了」などと、機械的に区別することはできません。 それは英語も日本語も同じことです。「バスが来た」「バスが来る」って。


すずきひろし
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